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全宇宙誌

杉浦,康平(designer)

1979/10

技法
Technique
B5上製, 本表紙2C, カバー1C+箔
種別
Category
特定蒐集 _杉浦康平装幀コレクション _装幀
編著者名
Author
松岡正剛[ほか]編
出版事項
Publisher, Publication date
工作舎, 1979.10
登録番号
Assesion Number
解説
Commentary
宇宙空間に浮遊するモノリスとしての黒いオブジェ。1979年に刊行された『全宇宙誌』は、出版・デザインの歴史に今なお浮遊する、伝説の本である。
構造化された数々の仕掛けについての詳述は、ここでの字数のゆるすものではない。
ただ、総体としてのこの書物がその後のデザイン界・出版界におよぼした影響の計測不能の深さについては、あたかも最新の宇宙論で話題の「暗黒物質(ダークマター)」のごときものだと述べるしかない。
宇宙についての知見が圧倒的に更新された今日、次の『全宇宙誌』の出現を待ち望むことはできないのであろうか?
4年の歳月をかけ、1979年に刊行された『全宇宙誌』は、杉浦がアートディレクションし、松岡正剛監修のもと、数多くの工作舎スタッフが参加して精緻の極みともいうべきデザインワークを完成させた。
左に倒すとアンドロメダ星雲が、右に倒すとフラムスチード星座図が暗黒の小口を背景に、突然現れて、見るものを驚かせる。
『全宇宙誌』の後付には、ADノートとして一見開きが設けられ、杉浦が本書にこめた11項目のデザインメソッドを記し、この漆黒の書物に重層する情報の棲み分けを明かしている。
たとえば、右下隅は「151人の天文学者小事典」。ピタゴラスからカール・セイガンまで、星に魅せられた魂の系譜、その肖像が、見開きページごとに闖入する。見開きノド上のコーナーには、数々の天文観察機器が「オブジェコレクション」として並ぶ。さらに、全ページの裾部分を横長に貫く、長い長い連続部分には、時間や重さ、距離、速度など、全宇宙を貫く計測スケールが刻まれている。右上隅に現れるのは、「わき見する図像」群。天体スケッチや機器の設計図がより集う、気配にみちた一画である。本の小口にも、思いがけない、動く仕掛けが隠されている。
一冊であるはずの書物の中に、四冊もの本が同居している。「多」であって「一」である。「一」であって「多」である。この一冊が、「ただならぬ多」である宇宙を読み解くための、啓発の書であることを予感させる。
「たくさんのヤドリギを寄生させ、さまざまな虫を棲まわせ、飛び交う小鳥を休ませる大きな樹。この巨樹のように、いくつもの異なる本と共存する一冊の本が生まれでた。」 それが『全宇宙誌』なのだ……と杉浦は記している。

協力=中垣信夫+海保透+市川英夫+森本常美+戸田ツトム+羽良多平吉+木村久美子+海野幸裕+中山銀士+松下正己

五、ノイズから生まれる
本文|小口に(画像)を浮かびあがらせる